3月31日
終わりの時は
いつも
もういちど眺める
始まりの時から
今、終わってゆくまでの間の
至らなさや
未熟さの数々
救えなかった気持ち
届かなかった声を
もういちど
じっと眺める
飾られた園舎の中で
さようならの歌を聞きながら
はにかんだ子どもの横顔を
そっと見て
ただ胸のうちにあった
自責の念に
じっと目を凝らし
耳を澄ませ
黙って耐える
やってあげたことよりも
してやれなかったことのほうが
母の心に強く残ってしまうのは
ゆく春のさだめなのだろうか
旅立ちの前
母さんの涙は
懺悔に近い
そうして
全部眺めきったら
笑って さようならだ
走り回ったお庭と
お世話をかけた先生と
母を苦しめる
自戒の思いと
両手を広げて
春空に放り投げよう
舞い散る桜の花びらに乗せて
笑って
さようなら
ゆく春の恩寵
人は…
お別れできる
場所からも
人からも
自分を苦しめていた
あらゆる感情からも
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