キミよ。

隣でキミが静かにご飯を食べている。

震える手で、懸命に。

たくさんの米粒をこぼしながら、

幸せそうに食べている。


オムツのとれない2年生。

ジヘイショウ

キョウチョウ ウンドウ ショウガイ

ハッタツチタイ…

キミを形容する名前はいっぱいあるけれど

母さんが知りたかったのは

そんなことじゃなくて

ただ、キミと一緒に

この世を楽しむすべだった。

キミの何をもわかってあげられなかった日

母さんは泣いた。

キミのことをもっと

もっとわかりたくて

くる日もくる日も

母さんの空は曇っていた

お皿を投げつけた朝があった。

泣き叫ぶキミの頬を叩いた午後。

それでも指をつないで歩いた夕暮れ。


―かか?だいすきだよ。―


震えるキミの手がいつも言っていたから

母さんは母さんになれた。

キミがいなかったら

知らなかった気持ちがあった。

キミがいなかったら

気づかなかった場所があった。


キミが与えてくれた

日々、人を愛してゆくための

この遥かなる修行。


キミよ、

母さんは何度でもこの人生を選ぶだろう。

生まれ変わってもきっと

キミを生み

キミと過ごし

キミを愛してゆく

この道を歩くだろう。

それを許してくれるかな?

静かにご飯を食べている、

米粒だらけのキミよ。

草原のコトノハ

母たちの唄 益子由実 YUMI MASUKO

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