おとなであれ こどもであれ
昼と夜の境目がにじむ
黄昏のころ
5才の娘が不意に言う
「かか、あたしを怒って。」
「…なんで?」
「だって、泣きたいんだもの。」
おとなであれ
こどもであれ
生きていると
言いようのない切なさに
胸がつままれる時がある。
遠い祖先から紡ぎ込まれてきた
遥かなる記憶なのだろうか。
そのことが不意にこみあげてきて
ああ、泣こう
と思う時がある。
静かに流れた涙を
母に言葉で説明できなかった。
説明できなかったから不思議がられて
幼い涙は、われにもあらず
子どもらしくない、という柵の中で
責められたカタチで封印された。
いつか誰かに見つけてもらうまで…
そうだった。
わたしもかつて、そうだった。
5才の娘に思いがけず救い出された
幼いわたしの涙。
ずっとこの日を待っていた。
不思議なことなんかじゃなかった。
子どもらしくないってこともなかった。
おとなであれ
こどもであれ
生きていることの
言いようのない切なさを
どこかで覚えている。
時々、ふとそれを思い出して
理由も語れずに
泣くのだろう
おとなであれ
こどもであれ
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