拝啓

人生の中を
淡く、でも確かな軌跡を心に残して
通り過ぎていった懐かしい人が、
今日もがんばっていることを
時を超えて
場所を超えて
ふと、知った時。
目の前にある
滑るように慌ただしい
ぎゅーっと縮こまった日々が
ふわり、と広がった。

同じ空の下で
あの人が今日も汗をかいている。
深く呼吸して生きている。
それを想うだけで
視界は開け
濁った気持ちが澄んでいく。

あゝ  こんなにも支えられていたのだ。
胸の内で。
静かに。
褪せることない温度をもって。

離れていても
ナマ身の暮らしでは
もう会うことはなくとも
温かな面影をたずさえて
自分の今を支える確かな気配。

その影を
つぶれるくらい抱きしめて
また一歩。
次の一歩、この道を生きていく。
拝啓
元気にしてますか。
あれからどうしていましたか。
幸せにしてますか。












草原のコトノハ

母たちの唄 益子由実 YUMI MASUKO

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