母さんの色。
あじさいってなに色?って
子どもが話している。
うーん。いろんな色が混じってて
分かんない。
って、また別の子どもが言う。
まだ独り身だった頃、
母さんにも色があった。
白と黒がはっきりしていて、
光と影もくっきりしていた。
父さんと一緒になって
違う色が混じって
母さんの色は不安定に滲んだ。
驚きと戸惑いをもって
その色を見る。
すっきりとした単色だった頃の自分を
羨ましく思ったりも、した。
キミが生まれて
また新しい色が加わった。
はみだしたり、
ぐちゃぐちゃになったり、
白も黒も分からなくなって
光と影もぼやけた。
妹たちも生まれて
いつしか
淡く
重なり
溶け合う
境目のないたくさんの色を
母さんは身に帯びた。
24時間
365日
休みない酸っぱい苦労と育てる責任を
誇りにして
幾重にも淡く重なり続けた色たち
どんどん深くなり
背負う色も増えたのに
清らかな繭のような
土の匂いのする
そのすべての色たちが
母さんの色だ。
雨に打たれて、
さらに艶やかな色彩を放つ
あじさいのように。
もう、
キミたちなしで母さんの色はできない。
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