愛のいたちごっこ

「母さん、あたしのこと、すき?」

これほどに愛する気持ちをもってしても

キミの求める母の愛に追いつかない。

母さんのちっちゃい心は

いつだってキミのことでいっぱいだけど

キミの大きい心は

母さんの愛で満ち足りることはない。


どんなに手を尽くしている

と思っても、まだ足りなくて、

それ以上に心を砕いても、

もっともっと、と欲しがる。

ー満たせてやれていないー

そのことが母さんの心をいつも少しだけ

悲しい色に染める。

そして、キミもまた同じように

―満ちていないー母の愛を思い

悲しみにその胸を泳がせるだろう。


宇宙のように遥かなる愛のいたちごっこは

決して成就することなく

次の世代へ受け継がれる。

お互いのやさしい悲しさを抱きしめたまま。

そうして、そうして、いつか

母になった娘に、子が聞くだろう。

「母さん、あたしのこと、すき?」


キミは思い出すだろうか。

あの時のキミも同じだったことを。

キミは気づいてくれるだろうか。

母さんも今のキミと同じ思いだったことに。

草原のコトノハ

母たちの唄 益子由実 YUMI MASUKO

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