眠れぬ母の夜
夢の中で三女がうなされている
「かか~。かか~?」
おぼろげな声で私を探している
今すぐにでも夢の中に駆けつけたい
夢に忍び込んで
娘を苦しめるものすべてをやっつけたい
だけど…
わたしにできるのは
「すぐ隣にいるよ」
と背中をさすりながら
夢の中でどうかわたしがすぐに現れるよう
唇を噛んで祈るだけ
栄養を摂ること
よく動くこと
煙草の煙を吸わないようにすること
お酒を控えること
自分さえ気をつければあなたを守れていた
あの頃
知らなかった気持ち
わたしの身を離れ
どんなに手を伸ばしても届かない場所が
あなたに在ることを思い知る
育てていると
自分の手ではどうにもならない場所と
対峙しなければならない瞬間が
ある
ああ、たまらない
自分の手の中に収めておきたがっている
自分のエゴにも気づいている
自分さえ頑張れば世界が回っていた時代とも
とっくにサヨナラしたはず
なのに、それなのに
やっぱり、たまらない
夢の中の娘を救い出せずに
たまらない想いを
つぶれるくらい抱きしめながら
眠れぬ母の夜
0コメント